第3話
[ 夏の海 ]

夏の海・・・ 照り付ける太陽。
昼間の海水浴場でまさかあんな恐ろしい目に合うとは・・・

昨年の夏、私は久しぶりに会った親しい友人男女6人で海水浴に出かけることになりました。 場所は友人が毎年訪れると言う有名な避暑地で私もよく行く場所でした。

私たちはワンボックス車に乗り込み夕方6時頃出発しました。 ゆっくり行って明日の朝から泳ごうと言う友人の計画でした。 目的地に向かう道すがら、不思議なことがありました。

車内はまるでお祭り騒ぎのように盛り上がっていましたがさすがに1時を回ると疲れて寝てしまう人も居ました。 気が付くと起きて居るのは、助手席の私と運転席のSだけでした。

「さすがに、あれだけ騒げば疲れるよな。」Sがいいます。

「ほんとだよ、あのテンションでずっと居たら明日溺れるよ。」

静かになった車内で私とSは、苦笑いしながらこんな話をしていました。 しばらく車を走らせていると、国道工事の看板が現れました。 迂回の地図がありましたので、私たちはそれに従い迂回をすることになりました。

迂回した道は、土手の上で、車2台がやっとすれ違える程の狭さで、もちろんガードレールの様な安全設備はありません。

うっかりすれば脱輪してそのまま土手の斜面を走る事になりそうな感じです。 どうやら高速道路の工事のようでした。 先を走る車も、後続車もありません。 Sは注意深く車を走らせています。

と、前方に人影が見えました。 良く見ると人影は2人、それも1人は背が高くもう1人は背が低いなんとも妙な2人組です。 我々と同じ方向に向かい、左側を歩いています。

こんな時間に何故こんなところを・・と思いましたがSはスピードを落とし、徐行して2人を抜かしました。 と、そのとき! 2人の姿が視界から消えたのです・・・

「あれ!?今、人いなかった?」 「居たよ!だから徐行したんだよ!」 私たちは車を降りて2人の姿を探しました・・・何処にもいません。 両側は斜面、視界は100%の場所に2人の姿が無いのです。

私たちは急いで車に乗り込みその場をあわてて離れました。 「今のは、なんだったんだろう?」 「まっ!何も見なかったことにしようぜ!」 こう話がまとまり?その場の出来事は後ろで寝ている他の人には、黙っていることにしました。

現地に到着したのは午前5時頃、漁港のようなところでした。 「7時に船が出るからそれまで一休みしておこう」と、Sが言います。 どうやら船で行くようです。

場所はSに任せてありましたので私はそれに従い一休みすすることにしました。 ところが興奮しているせいか厚いせいか、なかなか眠りに付くことが出来ずに7時を迎えてしまいました。

乗り込んだのは小さな漁船で10人も乗れば満員になってしまいそうななんとも頼りない船でした。 しかし、どうやらSは船長と親しい間柄のようで楽しげにいろいろと話をしています。

目的地までは、20分程で到着する様です。 どこかの島へでも行くのかと思いましたがどうやら様子が違います。 20分程経った時ようやく目的地が見えてきました。 なるほどそこは、同じ陸続きでも船でしか行くことの出来ない綺麗な浜辺でした。

三日月型の浜辺に、海は透き通る程の青さ、人もまばらで、海の反対側は一面の青々した山、まさにプライベートビーチと言ったところです。 何度も訪れた事のある私も、さすがにこんな穴場があるとは知りませんでした。

女の子たちはうれしそうに、キャッキャッとはしゃいでいます。 「どうよ。」Sは自慢げに鼻高々です。 「いいな。」私たちも正直にそう答えました。

やがて船着場から船が遠のいて行きました。 「心配するな、4時にまた迎えに来てくれるから」 「別に心配しているわけじゃないよ。」 全てを俺に任せろ! 的なSの態度になんとなく悔しい思いをしながらそれでも、こんなすばらしい場所へ案内してくれたSに感謝していました。

私たちは早速、水着に着替え透明度の高い海へ飛び込みました。 ゴウグルを付けて潜るとそこは本当に幻想的な世界でした。 本当に日本の海か?と疑いたくなるくらいでした。 午前中を目一杯遊び、さて昼ごはんです。

海の家はおろか、売店も無いこの場所で私は肝心の昼飯のことをすっかり忘れていました。 すると、さっきから姿の見えないSが両手に沢山何かをぶら下げて戻って着ました。

何と、サザエやアワビ等を持っているではありませんか。 Sの抜かりなさには全員ほとほと感服しました。 すっかり満足した私たちは食後浜辺に横になり少し体を休めることにしました。

照りつける太陽もこの場所では全然うっとうしく感じません。 いつしかうとうとした私は妙な夢を見ました。 暗い海の中、私一人が泳いでいます。 ふと振り返ると今居るビーチで他の5人が必死に私を呼んでいます。

私は岸に近づこうと必死に泳いでいるのですが近づくどころかその距離は益々遠ざかるばかりです。 これはヤバイと思い必死に泳ぎを続けます・・・・

と、ここで目が覚めました。 (何だ夢か!)そう思い、体を起こすと他の5人はもう水の中ではしゃいでいました。 どうやら私だけが、寝過ごしていたようです。 他の5人に遅れをとるまいと私も、海に飛び込みました。

ここまで全然いいところ無しの私でしたのでここは一つ得意の泳ぎで皆に、差をつけようと思い、ブイのところまで泳ぎはじめました。

これが恐怖の始まりです・・・ 波もさほどありませんし、海水も思ったより冷たくありません。 あっという間にブイのところまで泳いでしまいました。 体力も帰りの分を差し引いても、まだ余裕がありました。

そこで私は、もう少し先まで泳いでみようと思い進み出しました。 と、岸を見ると4人が私を手招きしています。 (ん!デジャブー現象?)私は先ほど見た夢と同じ様な光景を見てふと不安になりました。

Sがこちらに向かって泳いできます。 (なんだ?)と思った瞬間!!!! 私の両足を誰かが引っ張ったのです!!!!! その力は物凄いもので、私はあっという間に海底に引きずり込まれました。

そして、足元には2人の見知らぬ男女が私の足をしっかりつかみニヤニヤ笑っています。 (いったい何の悪ふざけだ!!!) 足をばたつかせましたが、一向に離そうとしません。 (これはまずい!)と思った瞬間! 私の手をガッチリと握ったSがいました。

その瞬間、2人の男女は水に溶けるように消えていったのです。 海面に上がり、やっと息をしたとき 「大丈夫か?」とSが言います。 「い、今のは・・・・」荒い息で私が言うと 「とにかく、岸に上がろう!」と泳ぎはじめました。

岸に着いた私は心配そうに見守る4人をよそにSに切り出しました。 「お前、見たか?」 「ああ、見た!やっぱり本当だったんだ!」 Sの話はこうでした。 昔、この海岸で男女が自殺して、その男女の霊があのブイより先に行った者を海に引きずり来む。 だから決してあのブイより先には行くな。

と先ほどの船の船長に言われてたそうです。 「俺も、まさか本当の話だとは信じられなくて・・・お前が行ったからもしや、と思って慌てて後を追ったんだ・・・」 一部始終を聞いていた他の4人は一同に「まさか〜?]と疑っています。 当然でしょう。

けれど、次の瞬間全員が信じざるを得ない証拠を発見しました。 そうです、私の両足首には血がにじむくらいに、ハッキリと人の手形が残っていました。

もし、あの時Sが機転を利かせて、助けに来てくれなかったら・・・ 今思うだけでも全身に鳥肌が立ちます・・・

次の話

 

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